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2009年03月21日

特許法の罠2 麗しき依頼人

 事務所に入った瞬間、私は軽い眩暈を覚えた。見慣れたはずの事務所が、一人の女性のせいで、まるで別空間のように感じられたからだ。女性の歳は二十歳を過ぎたくらい。大きな黒い目と、光が当たっているかのような白い肌が印象的だ。小柄だが、その美しさが存在感を醸し出している。
「どうも、私が玉村です。三十を過ぎて独身ですが、決して女性に興味がないわけじゃない。便利屋という仕事柄、なかなか縁がないのです。それでもこの仕事をしているのは、弱者を助けるため。決して権力には屈しません。そのせいで、警官とは犬猿の仲です。ところでお嬢さん、お名前は何とおっしゃいますか?」
「え?ああ、私は、松本瑞穂といいます」
 戸惑ったような声で、その女性は答えた。緊張しているのだろう。
「瑞穂さんですか。いいお名前ですね。あなたのような若くて美しい女性が、ここに来るのは珍しい。私の依頼人は、一癖も二癖もある野郎が多いのです」
「そ、そうですか。あの、実はご相談があるのですが」
「相談がなければ、こんな所には来ないでしょう。どうぞ、お話ください。ただし、法に反するようなことは、お手伝いできません。それが、便利屋玉村のポリシーなのです。留置場に入ったことは一度ならずありますが、この仕事のせいじゃない。痴漢と間違われたのが理由です」
「そうですか。あの、実は・・・」と言ったところで、彼女は口ごもった。どうも厄介な仕事の予感がする。私は彼女が話し始めるのをじっと待った。
「実は、夜逃げを手伝って欲しいんです」
 震える声で、彼女は言った。
posted by かずひで at 11:26 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一話 特許法の罠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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