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2009年03月22日

特許法の罠3 父親の背中

「夜逃げ?あなたが夜逃げをするんですか?」
 そう私は尋ねた。彼女は頷いた。
「私と、そして父を、夜逃げさせて欲しいんです」
 どんな仕事にでも飛びつくほど、私は落ちぶれているわけじゃない。椅子に背をもたれ、これまでにこなしてきた仕事を思い出した。害虫の駆除。引越しの手伝い。迷子の猫の捜索。危ない橋をあえて渡ることはしなかった。
 しかし、私は彼女の依頼を断ることはできなかった。彼女の切なげな表情は、私の心の琴線に触れ、そしてそれを激しく弾き始めていたのだ。
「何やら大変なことが起こっているようですね。お聞きしましょう」
「私の父はたった一人で、松本製作所という小さな町工場を経営しています。工場では家電メーカーの下請けで、電化製品の部品を製造しています。でも、単なる下請けだけをしているのではありません。父は、製造方法を色々と工夫して、よりよい製品を作ってきました」
「ほう、お父さんはなかなかの腕の持ち主なんですね」
「工場では、ここ数年は携帯電話のアンテナを製造していました。三年前、父は高性能のアンテナを製造する方法を見つけました。チタンを遠心分離機にかけることで、高密度のチタン製アンテナを作る方法です。その方法を用いると、電波の感度が二倍になるんです」
「それは素晴らしい。日本の工業力を支えているのは、あなたのお父さんのような優秀な技術者です」
「父は、そのチタン製のアンテナの販売を始めました。感度のよいアンテナということで、業界でも話題になりました。ところが先日、電器メーカーのRCCから、警告状が届いたのです」
「警告状?いったい何の警告ですか?」
「これを見てください」
 彼女は一枚の紙を、バッグから取り出した。
posted by かずひで at 23:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一話 特許法の罠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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