にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ弁理士ブログランキングです。

2009年03月28日

特許法の罠5 便利屋の仮面

 佐々木功は、細身で背の高い男だった。歳は30代半ば。その若さで部長ということは、相当の切れ者なのだろう。
「私が、RCC社知財部長の佐々木です。松本社長のお嬢さんですね。わざわざお越し頂き、ありがとうございます。どうぞお掛けください」
 そう言って佐々木は手で椅子を示した。RCCの会議室には、佐々木と瑞穂とそして私の三人がいた。
「ところで、お隣の卵のような顔をされた方は、あなたのボディーガードですか?」
 佐々木は私を一瞥し、再び瑞穂の方を向いて言った。
「いえ、この方は・・・」
「私は便利屋玉村堂の玉村光雄と申します。今日は、彼女のボディーガードとしてだけでなく、あなたとお話をするために、ここに来ました」
 戸惑う瑞穂に代わり、私は自ら名乗った。
「ほう、便利屋さんが何のお話でしょう?」
「あなた方が送ってきた、警告状についてのお話です。あの一分の隙もない、完璧な警告状についてのね」
「面白いことを言う方だ。便利屋だけでなく、皮肉屋も始められたらいかがでしょう?」
 やはり切れる。この男には小細工は通用しないようだ。
「それでは、単刀直入に申し上げましょう。松本製作所の社員が、三年前に突然退職しました。あなた達は、その社員から、チタン製アンテナの製造方法の情報を買いました。そして、あたかも自分達が発明したかのごとく特許出願をしました」
 私はゆっくりと話しながら、彼の表情を観察した。
「ずいぶんと変わった発想をなさいますね。弊社の企画部に、スカウトしたいくらいです」
 彼は顔色一つ変えずに言った。
「残念ですが、私は企画屋にも皮肉屋にも興味がありません。それから、私がただの便利屋だと思ったら大間違いですよ」
 私は、胸のポケットから、菊のバッジを取り出した。今まで冷静だった佐々木の表情に、変化が生じた。
「それは、弁理士バッジ・・・。」彼は口元を引きつらせた。「まさか、お前は弁理士*4なのか?」
 私は椅子から立ち上がり、佐々木を見下ろした。
「そうだ!私は、理(ことわり)を弁(わきま)えた弁理屋、玉村光雄だ!」

*4 弁理士とは、知的財産の専門業務を行うことができる国家資格。ひとことで説明するのが難しい職業である。
posted by かずひで at 01:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一話 特許法の罠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/116323389
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。