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2009年03月31日

特許法の罠7 怒りのサブミッション

 会議室のドアが開き、警備員が飛び込んできた。彼は私に近づき、右手で襟を、左手で袖を掴んできた。どうやら柔道の心得があるようだ。しかし、彼の力量では、私のバランスを崩すことはできなかった。その表情に焦りの色が浮かぶ。
 その時、きゃあ、という悲鳴が聞こえてきた。振り向くと、佐々木が瑞穂の腕を掴んでいた。私の怒りは沸点を超えた。
 私は警備員の顔面に、至近距離からの頭突きを食らわせた。鼻から真っ赤な血を噴出させながら、彼はその場に崩れ落ちる。私は素早く佐々木に近づき、瑞穂を掴んでいた腕をひねりあげた。
「お前たちは、瑞穂さんのお父さんの発明の情報を盗み、自分達の発明のように見せかけて、特許出願をした。そういうやり方は、冒認出願*5にあたるんだ。本当なら特許権は瑞穂さんのお父さんのものだ。さあ、この、特許権の移転登録申請書*6にサインをしろ」
「冗談じゃない。そんな要求には応じられない」
 佐々木は私の腕をふりほどき、左ストレートを放ってきた。私は、そのパンチを両手で受け止めた。そのまま佐々木の左腕にぶら下がるように飛びつく。佐々木は前方に一回転する。次の瞬間、私の両足に挟まれた彼の左腕は反り返っていた。電光石火の飛び付き腕ひしぎ十字固めが決まったのだ。
「うぎゃー!助けてくれ!」
 佐々木は悲鳴を上げた。私は技をかけたまま、彼の手元に移転登録申請書とペンを投げた。
「さあ、サインをしろ!」
「分かった。だから、技を外してくれ」
「駄目だ!今すぐ空いている右手でサインをするんだ。そうしないと、左腕をへし折るぞ!」
 佐々木は右手でペンを持ち、サインをした。私は技を解いた。
「いいか、佐々木!人の発明を盗んで特許を取得し、それを盾に一億円の損害賠償を請求するなんて、人の道を外れたやり方だ!お前は外道だ!いや、外道オブ外道ズだ!文句があるなら言ってみろ!」
 彼は何も言わなかった。左手を押さえ、涙を流しながら、ぶるぶると震えるだけだった。

*5 発明者に無断でした特許出願のこと。本来なら冒認出願は特許を受けられない。
*6 特許権の移転したい場合、移転登録申請書を特許庁に届ける。
posted by かずひで at 01:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一話 特許法の罠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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