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2009年04月02日

特許法の罠8 愛の行方

「玉村さん、本当にありがとうございました。特許権の移転をしてもらえたおかげで、アンテナの販売を再開することができました」
 そう言って、瑞穂は深々と頭を下げた。
 事件からひと月。彼女は再び私の事務所にやってきた来ていた。
「それにしても、玉村さんは、弁理士でいらっしゃったんですね」
「いやいや、お恥ずかしい。困っている人を助けるためには、肩書なんて関係ありませんよ」
 私は彼女の顔を見つめた。悲しみに満ちていた目は、今は輝きを取り戻していた。この輝きが失われることは、もう二度とあってはならない。
「瑞穂さん、今回の事件を通じて、私は気づいたんです。あなたを守ることが、私の運命なのだと」
 瑞穂は目を丸くしている。私の気持ちは伝わっているようだ。私は続けた。
「あなたが卵の黄身ならば、私は黄身を守る殻となります。さあ、私の胸に飛び込んで来てください」
 私は両手を広げた。すると彼女は椅子から飛び上がった。
「ゆ、許してください。お金はきちんとお支払いしますから」
 彼女は玄関から駆け出して行った。予想外の出来事に、私は呆然とするしかなかった。しばらくして、階段を降りる足音が聞こえてきた。フレンチブルドッグのマーロンを抱いた河原が、部屋に入ってきた。
「依頼人さん、出て行っちゃいましたね」
「いったいどういうことなのか、神様に尋ねたい気分だよ」
「『お前が魅力的過ぎるせいだ』と神様は答えると思いますよ」
 魅力的過ぎるせい?だとすれば、私は彼女を悲しませてしまったのかもしれない。
「この魅力は生まれつきなんだ。どうすることもできない」
「マーロンご飯だよ。うーん、いい子だ、いい子だ」
「河原、この魅力はどうしたら・・・」
「ああ、はいはい、本当に困りましたねー。それより玉村さん、特許法百四条って知ってますか?」
 マーロンに餌をやりながら、河原は言った。
posted by かずひで at 00:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第一話 特許法の罠 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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