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2009年04月15日

疑惑の登録商標3 河原の帰還

 猫の社交ダンスのような試合は、両者決め手を欠いたまま、最終ラウンドが終了した。ふがいない試合内容に、会場からは容赦のないブーイングが浴びせられた。うんざりしながら判定の結果を聞いていると、河原が席に戻ってきた。
「席がどこか迷ってしまいましたが、玉村さんの頭が目印になりましたよ」
 河原は私の助手である。フレンチブルドックのマーロンを溺愛する変わり者だ。軟弱な彼にボディガードは任せられないが、チケットを二枚もらったこともあり、今日は特別に連れて来た。
「玉村さんは、座りっぱなしで疲れないんですか?」彼がそう尋ねてきた。
「座ることは苦にならない。同じ体勢をずっと続けられることも、便利屋の素質の一つなのだから。私はかつて、朝の十時から夜の十一時まで、同じ体勢で座り続けたこともあるんだ」
「なるほど、玉村だけに玉を打っていたといことか」
 私がどこで座っていたのか、感づいたようだ。体力はない河原だが、意外と鋭いところがあるのだ。まあ、実際には、玉ではなくコインだったのだが。
「ところで、売店でこんなものを買ってきましたよ」
 彼はそう言いながら、持っていた本を私に差し出した。表紙には『クレイジーボクセファンブック』と印刷されていた。
「おい、お前はクレイジーボクセのファンなのか?」
「いえ、情報収集のためですよ」
 私は本を開いて、最初の数ページをめくってみた。番田玲という名前と写真が目に入った。これがチャンピオンか。
「番田玲のこと、知らなかったんですか?ビールのCMにも出てますよ」
 CMに出るほど有名な選手が相手なのか。私はページをパラパラとめくる。すると、ロゴマークらしきものが目に入った。星のマークの周囲を囲むように「Crazy Boxe」という文字が並んでいる。
「そのロゴマークは、クレイジーボクセの登録商標*1 ですよ」
「なんだって?ボクシングジムが、登録商標を持っているのか?」
「そうですよ。Tシャツとかリストバンドとか、オリジナルグッズを販売する時に、その商標を使ってるんです」

*1 登録商標 特許庁に対して手続きを行い、登録が認められた商標のこと。商標登録を受けると、他人が登録商標に似た商標を、似たような商品に使うことを阻止できる。
posted by かずひで at 21:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二話 疑惑の登録商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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