にほんブログ村 士業ブログ 弁理士へ弁理士ブログランキングです。

2009年04月29日

疑惑の登録商標8 表と裏

 試合がもうすぐ始まろうとしている。このコインを、いったいどんな反則に使うのだろうか。
私はコインを裏返してみた。裏にも同じ模様が現れた。表も裏も同じ模様。何の変哲もないコインである。
いや、待てよ・・・。
「河原!わかったぞ!」
「何がですか?」
「いいか、どんな人間でも表と裏がある」
「ん?」
「私は、幼い頃から、権威に屈することを、よしとしなかった。だから、教師に胡麻をするようなことは、決してしなかった。悪戯をした友達の代わりに、私が身代わりになって怒られたこともあったくらいだ」
「へ?」
「しかし、私もたった一度だけ、過ちを犯してしたことがある。小学校五年生の時、窓ガラスを割ったのを、友達のせいにしてしまったんだ。なぜそんなことをしたのかというと、担任の先生が、とびきりの美人だったからだ。どうしてもその先生に嫌われたくなかったんだ!」
「昔から美人に弱かったのか」
「好きな人には、よく思われたい。そのくらいの裏表は、誰にだってあるんだ。愛されるよりも愛したい、なんて言いつつも、愛するよりも愛されたい。そういう葛藤こそが、人情っていうもんだろう!」
「人情?」
「裏表がない。そんな奴ほど怪しいんだ。それは、コインだって同じだ!」
 私は立ち上がり、リングサイドと客席を仕切る鉄柵を飛び越えた。そして、リングから降りてきた三郎会長に駆け寄った。
「玉村さん、どうしましたか?」
「三郎さん、敵は反則行為を企てています」
 私は息を整えながら、彼に耳打ちをした。
「え!?反則を?」
「このコインを見てください。一見すると普通のコインです。しかしよく見ると裏も表も同じ柄です。これをコイントスに使えば、必ず表が出るという仕組みです!」
 三郎はしばし言葉を失った。いくらクレイジーボクセが危険なジムだとはいえ、反則行為をするために、わざわざ商標のついたコインを作っているとは思いもよらないだろう。私の推理に驚くのも、当然である。
 ところが、三郎の反応は意外なものだった。
「玉村さん。ボクシングにコイントスはないんですけど」
「え?」
「サッカーじゃないんですから・・・」
 推理は根底から崩れ去った。私は思わず天を仰ぐ。眩しいライトに目を細めた瞬間、ゴングが打ち鳴らされた。
posted by かずひで at 17:25 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二話 疑惑の登録商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。