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2009年05月14日

疑惑の登録商標12 親子の絆

「玉村さん、本当にありがとうございました。あのまま試合が続いていたら、大吾は取り返しのつかない怪我を負っていたかもしれません」
 試合の翌日、村田三郎は、私の事務所にやってきた。
「番田の王座は剥奪になり、改めてチャンピオン決定戦が行われることになりました。おそらく大吾も出場できるはずです」
「そうでしたか。それはよかった」
「それより、肩の調子は大丈夫ですか?パンチをガードしたときに、痛めたのではありませんか?」
 彼は私のことを心配してくれているようだ。
「少し痺れを感じますが、大丈夫です。心配ありませんよ」
 その時、私はなぜか、懐かしい気持ちになっていた。私は自分の父親のことを思い出していたのだ。
「私は幼い頃に父を亡くしました。この弁理士バッジは、実は父の形見なんですよ」
 無意識のうちに、私は父のことを語り始めていた。
「父は商標を専門に扱う弁理士でした。大きな仕事は好まず、屋号を守りたいと願う小さな商店を、採算を度外視して手助けしていました」
「そうだったんですか」
「だから、私は商標を反則に使ったクレイジーボクセを許せないんです。私は、クレイジーボクセの商標について、不正使用取消審判を提起したいと思います」
 三郎は黙って頷いていた。
「三郎さん。あなたを見ていると、私はなぜか父のことを思い出すんです」
 彼は、少し戸惑ったような表情を見せた。その表情は、やんちゃだった私に手を焼いていた、父の表情にそっくりだった。私は自分の気持ちをさらけ出そうと思った。
「あなたのことを、パパと呼ばせてください!」
 そう言って、私は両手を広げた。
「パパ!アイラブユー!」
 すると、三郎は椅子から飛び上がった。
「と、とんでもない。私は玉村さんのお父さんのような立派な人間ではありません。今日はこれで失礼します」
 立ち上がった三郎は、小走りに玄関を出ていった。突然の出来事に、さすがの私も唖然とした。
 しばらくして、階段を降りる足音が、聞こえてきた。視線を上げると、マーロンを抱いた河原が部屋に入ってくるところだった。
「三郎会長、出て行っちゃいましたね」
「どうしたんだろう。急用があったのだろうか?」
「たぶんそうだと思います。ところで玉村さん、不正使用取消審判ってなんでしたっけ?」
 マーロンに洋服を着せながら、河原が言った。
posted by かずひで at 00:47 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二話 疑惑の登録商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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