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2009年05月16日

疑惑の登録商標13 びっくり箱の禍

「不正使用取消審判っていうのは、商標権者が不正な使い方をした商標について、その登録の取り消しを求める審判のことさ」
 私は河原の質問に答えた。
「じゃあ、その不正な使い方って言うのは、どんなものですか?」
 彼は私の答えに満足していないようだ。
「不正使用って言うのは・・・、一言で言えば、よからぬ使い方だな」
「はあ?よからぬ使い方?具体的には?」
 重箱をつつくような質問に、私は反発を覚えた。細かいことを暗記するのは、何よりも苦手なのだ。
「条文にはちゃんと書いてあったんだが、ちょっと思い出せないなあ。法律っていうのは、暗記よりも理解が大切だからね」
「不正使用って言うのは、『商品の品質若しくは役務(*4)の質の誤認又は他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるもの』ですよ」
 マーロンの服のボタンを留めながら、河原は言った。
「こんな例を考えてみてください。ある玩具メーカーが販売している『クレイジーボックス』というびっくり箱が、とてもよく売れていました。それを知ったボクシングジムのクレイジーボクセが、似たようなびっくり箱を売り始めました」
「名前が似ているから、便乗したってことか」
「クレイジーボクセは、そのおもちゃ箱に、『Crazy Boxe』という商標の『e』の文字をわざと薄くしたロゴを印刷しました。すると、『Crazy Box』というロゴがついているように見えます。そのせいで、玩具メーカーのびっくり箱を買うつもりが、間違えてクレイジーボクセのびっくり箱を買ってしまう人が続出しました」
「なるほど。混同が生じるってことだな」
「こういうのを商標の不正使用と言うんですよ」
「なかなか、分かりやすい説明だったよ」
「何を寝ぼけたことを言ってるんですか!僕が言いたいのは、商標がついたコインで反則をしたって、不正使用にはならないってことです」
「な、なんだって!?」
 どうやら私は大きな誤解をしていたようだ。確かに、少し変な気はしていたのだ。
「もちろん、本当は分かっていたんだ。ただ、あいつらをちょっと脅してやりたくってね。クレイジーボクセは、組織ぐるみで反則をやっていたわけだからさ」
 私は、動揺を悟られないように、声のトーンを一定に保とうとした。
「その、組織ぐるみの反則っていうのにも、ちょっと疑問があるんですよ」
 そう言って、彼はスポーツ新聞を取り出した。
「この記事によると、グローブの中に入っていたのは、コインじゃなくって鉛の塊だったそうなんです」

*4 役務 サービスのこと。商標法では、商品に付ける商標だけでなく、サービスに用いる商標も、保護される。
posted by かずひで at 01:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二話 疑惑の登録商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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