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2009年05月18日

疑惑の登録商標14 冬の散歩

「グローブの中に鉛の塊?コインを加工して、塊にしたんじゃないか?」
「それはありえません。クレイジーボクセのコインはスチール製でしたから」
「コインが反則に使われていないとでも、言いたいのか?」
「その通りです」
「そんなはずはない!私はこの耳で『コインを反則に使おう』という言葉を聞いたんだ。奴らが組織ぐるみで反則を行っていたことは間違いない!」
 私は思わず声を荒らげた。しかし、河原に動じる様子はなかった。
「実は、あのコインは売り物じゃないんです」
 マーロンに首輪を付けながら、彼は静かにそう言った。
「売り物じゃない?」
 私は戸惑いつつ、彼の顔を覗き込んだ。
「あのコインは、『クレイジーボクセファンブック』を買った人が、おまけで貰えるものなんです」
「おまけ・・・」
「言い換えれば、彼らはコインを本の販売促進に使ってるんですよ」
「販売促進・・・。ま、まさか!」
 自分の背中を汗が滴っていくのを感じた。
「玉村さんが聞いた『反則』っていうのは、『販売促進』を略した『販促』のことだったんじゃないでしょうか?商標を販売促進のためのノベルティグッズに付けるって、よくやることですからね」
 私はトイレで聞いた、藤丸たちの会話を思い出した。
――藤丸会長、今日もクレイジーボクセは全勝ですね。ファンブックも売れているようです。
――順調なようだな。よし、またコインを「販促」に使おう。
 筋が通るではないか!私は恥ずかしさのあまり、両手で顔を覆った。
 グローブの細工は、おそらく番田単独の犯行だったのだろう。彼の行為を偶然発見できたからよかったものの、そうでなければ私の乱入こそ、歴史的な反則行為だと言われていただろう。
「私が番田の反則を暴いたのは単なる偶然だったのか。玉村がたまたまに救われるなんて・・・」
 沈黙が続いた。また余計なことを言ってしまったか。私は恐る恐る手をどけ、河原の顔を見た。
「無茶をやって偶然に助けられるのは、いつものことでしょ」
 足元では、セーターを着たマーロンが、尻尾を振っていた。
「一緒にマーロンの散歩に行きますか」
 私はクローゼットから上着を取り出した。
(了)

<あとがき>
「疑惑の登録商標」は、これにて完結です。
「特許法の罠」に比べると、知財の色合いが薄くなってしまいました。
エンターテイメント性を重視しているために(?)、文芸的にも法律的にも拙いところがありますが、フィクションとして楽しんで頂ければ嬉しいです。
せっかくなので、拍手ボタンをつけてみました。
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『第三話 隠蔽された意匠権』も連載の予定ですが、拍手の数が多い方がモチベーションが上がるかもしれません。
posted by かずひで at 16:05 | Comment(0) | TrackBack(0) | 第二話 疑惑の登録商標 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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